むくみで悩まれている方、多いですね。
特に足がむくんでパンパンになることが多いと、「何か病気があるんじゃないか」と、心配なりますよね。
私も病院で、腎臓病の患者さんが足のむくみを訴えているのをたびたび聞きます。私自身もあまり歩かなかったり、お酒を飲み過ぎたりするとむくむことがあるので、よくわかります。
栄養相談の際には、「むくみは食事や食べ物に関係があるのか」とよく尋ねられます。そんな際には「水分と塩分摂取量」に注意するように言うことが多いですね。
そこで、まずむくみとは何か、むくみの原因とその対処法を腎臓病が原因である場合も含めて明らかにしていきたいと考えていきます。
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そもそも、「むくみ(浮腫)」って何?
むくみは、体内の水分バランスが崩れたときに、体の一部が膨らむ状態のことです。
足や顔が膨らんで見える、靴がきつく感じるなどの症状がありますね。わたしたちもよく経験することですが、靴を脱いだ後に靴の跡が残ることがありますよね。それがむくみの一つの現れです。
むくみは皮膚の下の組織に水分が溜まった状態です。血液中の水分が血管の外に浸み出した状態で、少し専門的な言葉では「浮腫(ふしゅ)」ともいいます。浮腫などというと何だかむくみより怖そうなイメージになってしまいますね。
もう少し簡単に言えば、体の中の水分が適切に排出されずに体内に溜まってしまった状態を指します。
ボクサーが減量のために水分を搾り出しますが、全く逆のイメージですね。むくんだボクサーなんていませんからね。
むくみの原因
むくみの原因は多岐にわたります。主な原因としては、
・長時間同じ姿勢でいる
・運動不足・睡眠不足
・塩分の取りすぎ
・アルコールの摂取
・生理前のホルモンの変化
などがあります。
むくみが起きる病気
ほかに、むくみの原因になるものとしては、心臓病や腎臓病などの病気が挙げられます。
特に、腎臓病の患者さんにはむくみに悩む方が多いと思います。
腎臓は体の中の不要な物質や余分な水分を排出する役割があります。腎臓の機能が低下すると、水分の排出がうまくいかず、むくみが生じることが多いからです。
個別のむくみへの対処法
長時間同じ姿勢でいる
長時間同じ姿勢でいることで起きるむくみでよく知られているのが「エコノミー症候群」です。
エコノミー症候群、またはエコノミークラス症候群というのは、長時間の座位状態によって引き起こされる血栓症の一種です。
主に、長距離を飛行機のエコノミークラスで旅行した際に発生することが多いことで名付けられたものです。飛行機以外でも座位での長時間の移動中に起こります。
東日本大震災の後には、避難生活中の自動車内で寝泊まりしていた人に発症例があって、話題になりましたね。
エコノミー症候群は、座位中に血液が滞り、静脈内に血栓が形成されることで発生します。
主な症状には脚の腫れやむくみ、疼痛、赤み、呼吸困難などが含まれます。
対処法としては、歩行などの運動や下肢の体液循環を良くするマッサージが有効で、血栓の予防にもなります。
足のマッサージは弾性ストッキングの着用で代用もできます。
弾性ストッキングは長時間の手術を受ける患者さんや安静が必要な際にも着用してもらます。弾性ストッキングは使われたことがある方も多いのではないでしょうか。
もう一つの予防法として、血液粘度の上昇を惹起する脱水を防ぐためには適切な水分の摂取が重要です。
ただし、ビールやお茶などの利尿作用のある飲料ではむしろ脱水が助長されてしまうので避けましょう。
運動不足・睡眠不足
適度な運動や十分な睡眠は、体の血流を良くし、むくみを予防する効果があります。例えば、散歩やストレッチなどの軽い運動を日常的に取り入れることがおすすめです。
私も雨の日や、暑くてアスファルトが焼けているような日は、犬の散歩ができません。そんな日の翌日はてきめんに、足の甲からすねにかけてパンパンになって足が重くなってしまいます。
散歩を再開すると、あっという間に戻ってくれます。歩くことなどの適度の運動はとても効果的であると思います。
塩分の取りすぎ
塩分の取りすぎは、むくみをひきおこしやすくなります。
塩分によるむくみのメカニズムと対策をみてみましょう。
人間の生理機能は体内の塩分濃度を一定に保とうとする働きがあります。ですから、塩分をたくさん摂取すると体の塩分濃度を薄めようと体内に水分を溜め込み、特に足や足首のむくみとして現れます。
むくみを軽減するためには、塩分摂取を監視し減らすことが不可欠です。
料理の際に、塩や醤油の使用量を制限するだけでなく、高塩分の食品や隠れた塩分を含む加工食品を避けることにも気をつけてください。
フルーツや野菜に含まれるカリウムが豊富なバランスの取れた食事を摂ることは、過剰な塩分摂取の影響に対抗するのに役立ちます。
十分な水分補給も、体内の余分なナトリウムを排泄し、むくみを軽減するのに役立ちます。
持続的なむくみがある場合や塩分摂取についての懸念がある場合は、医師や栄養士に相談してください。
アルコール
アルコールは利尿作用があり、摂取すると一時的に尿の量が増えます。水分が尿として体外に排出されると、体が水分不足になるので喉が渇きます。そこで、大量の水を摂取しがちになります。
そうやって補給された水分の過剰な分が、むくみの原因となるのです。
やっかいなのが、アルコールを摂取しながら水分をとらないと全く別の悪影響が生じることです。それは、二日酔いや悪酔いです。
二日酔いの状態というのは、一種の脱水状態です。二日酔いの予防や悪酔いしないために、ウィスキーを飲む際のチェイサーのように水を飲むことが、ビールや日本酒など他のお酒を飲む際にも効果があります。過剰にならない程度の水分補給は大切ということですね。
よく言われることですが、ビールで水分補給はできません。ビールを飲んでいると、トイレがちかくなりますよね。
そこで、大量の尿が出ていきます。ビールで水分補給しているような気になりがちですが、出ていく水分が多いことがあります。
ビールを飲んで、大量のおしっこをしたら、忘れずに水分補給してください。
アルコールの影響と摂取のコツはこちらの記事を参考にしてください↓
生理によるホルモンの変化
女性は生理前にはホルモンのバランスが変わり、むくみやすくなることがあります。
この期間は特に塩分の摂取を控えるなどの注意が必要です。
腎臓病
腎臓病が進行すると、むくみが生じることがあります。腎臓病の疑いがある場合は、専門医の診察を受けることが重要です。
腎臓病とむくみの関係は次の章で詳しく解説します。
腎臓の基本情報
腎臓病によるむくみのことをもう少し詳しく解説します。
腎臓の役割と機能
腎臓は、体の構成要素のバランスを保つために重要な役割を果たしています。特に、水分や塩分のバランスを調整することで、体の中の環境を安定させています。
腎臓は私たちの体内で血液を浄化する役割を持っています。考え方としては、コーヒーメーカーのフィルターのようなものです。不要なものや余分なものを取り除き、きれいなものだけを通します。
腎臓の働きには下記のようなものがあります。
・ 体内の老廃物や余分な水分を尿として排出する
・ 血液をきれいにする
・ 血圧を調整する
・ 赤血球の生成を促進するホルモンを生成する
腎臓の機能が低下して水分が尿として排出されなくなると、人体は水瓶のようになって水分が身体中に充満してしまいます。これがむくみとなって、現れてくということです。
腎臓病の症状
腎臓が悪くなると出る代表的な症状
腎臓の機能が低下すると、むくみの他にも尿の色や量の変化、疲れやすさ食欲不振などの症状が現れることがあります。
腎臓病の初期症状
腎臓病の初期症状は、他の病気と似ているため、気づきにくいことがあります。
上記の症状のほかにも、尿の泡立ち、血尿、高血圧症のような症状が続く場合は、早めに医師の診断を受けましょう。
腎臓病の治療と予防
腎臓病の治療
腎臓病の治療方法は、病気の進行度や原因によって異なります。通常、薬物治療や透析治療などが行われます。症状や病状に応じて、医師が最適な治療法を選択してくれます。
腎臓病の予防方法
腎臓病の予防としては、塩分や水分の摂取量を適切にする、適度な運動をする、アルコールの摂取を控えるなどの生活習慣の見直しが重要です。
食事療法と水分制限が重要です
腎臓は体内の老廃物を排出する役割を持っていますが、腎臓病が進行するとこの機能が低下することはすでにお話ししました。
腎臓病では食事療法や水分制限が、腎臓の負担を軽減し、病気の進行を遅らせるために非常に重要になります。
腎臓病は医師や栄養士と相談しながら、個人に合わせた食事療法の計画が特に必要とされる病気です。
食事療法によって塩分やカリウムの摂取量を減らすことで、腎臓への負担軽減を図ります。
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適切な水分摂取量の決め方
腎臓病でなくても、適切な水分量を取ることはむくみ予防に効果的です。
適切な水分摂取量は、個人の体重、活動量、気温、湿度などの環境要因、そして健康状態によって異なります。
一般的に、成人の場合、1日に必要な水分摂取量は約2リットルから2.5リットルと言われています。
高齢者の場合、体の水分量が減少する傾向があるため、脱水症状を防ぐためには十分な水分摂取が必要です。高齢者の適切な水分摂取量は、1日に約1.5リットルから2リットルとされています。
また、食事からも水分を摂取することができるため、飲料水だけでなく、スープや果物の水分も考慮に入れることが重要です。
最終的には、のどが渇いたらこまめに水分を摂取することが大切です。特に高温多湿の日や運動後は、積極的に水分を補給するよう心がけましょう。
腎臓病患者の適正な水分摂取量
腎臓病患者の適正な水分摂取量は、病状や治療の段階によって違います。適切な水分量を守ることで、むくみも管理できるようになります。
以下にそのポイントをまとめます。
慢性腎臓病の初期段階
初期段階では、特に厳格な水分制限は必要ない場合が多いですが、腎臓の機能が低下してくると、過剰な水分摂取は体内の水分バランスを乱す原因になってくることがあります。
透析治療を受けている患者さん
透析治療を受けている患者さんは、透析間隔や体の状態に応じて水分摂取量を制限する必要があります。
特に、透析中は医師の管理のもとで、厳重に水分摂取量の管理が行われています。
医師の管理が行き届かない自宅にいる場合は、次回の透析までの間に体内に溜まる水分量を考慮し、適切な量を摂取することが重要です。
脱水のリスク
厳重な水分管理下にある腎臓病患者は、一方で脱水のリスクも高まります。いき過ぎた水分制限は避ける必要があります。
特に暑い季節や発熱時などは、適切な水分補給が必要です。
水分制限の工夫
透析患者は、食事からの水分摂取も考慮に入れる必要があります。
また、のどの渇きを和らげるための工夫、例えば、氷をなめる、口の中を濡らすなどの方法が役立つことがあります。
食事について最終的には、医師が適切な水分摂取量を決定して、栄養士がその水分量を考慮して献立を考えます。
個々の状態に合わせた水分量が決定されたら、厳密にそれを守っていただくことが最も重要なことになります。
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